経緯

防護柵は道路に沿って連続的に設置されることから、道路景観を構成する要素の一つとなっています。これまで、防護柵の色彩は白が標準的に用いられてきましたが、「美しい国づくり政策大綱」を契機に防護柵についても景観に配慮したものが求められるようになりました。
このため、鋼製防護柵協会では国土交通省が設立した学識経験者等からなる「景観に配慮した防護柵推進検討委員会」に委員として参画し、「景観に配慮した防護柵の整備ガイドライン」(平成16年3月)の策定に協力してきました。
その後、道路空間の再構築など時代に合わせた変更等を踏まえ、防護柵だけでなく道路付属物等も対象として、「景観に配慮した道路付属物等ガイドライン」(平成29年10月)が策定されています。

適用する道路と防護柵の種類

全国の全ての道路を対象とし、「防護柵の設置基準・同解説」に定められた全ての防護柵を対象とします。

防護柵の課題

景観に配慮した防護柵整備にあたっての留意事項

1.防護柵設置の判断と対応

防護柵を設置する場合は必要性を十分検討し、景観に優れた他施設での代替も考慮します。

2.形状
(1) シンプルな形状(付加的な装飾の抑制)
防護柵は周辺景観に対して目立ちすぎないよう、シンプルな形状とします。
(2) 透過性への配慮
主に自然景観や田園景観が広がっている地域では周辺への眺望を確保します。
(3) 存在感の低減
主に橋梁部や中央分離帯に設置されるコンクリート製の壁型剛性防護柵は、面としての存在感が強いため、必要に応じてコンクリート壁面の存在感を低減させる工夫を行うことが望ましい。
(4) 人との親和性等に配慮
ボルトなどの突起物、部材の継ぎ目などにより歩行者に危害を及ぼすことがなく、表裏感を緩和させたデザインなど、人との親和性に配慮します。
(1)シンプルな形状
(2)透過性への配慮
(3)存在感の低減(4)人との親和性に
3.色彩

防護柵の色彩については、従来のように白を標準とするのではなく、それぞれの地域において地域特性に応じた適切な色彩を選定することを原則とします。
鋼製防護柵については一般的な日本の自然、風土、建築物等との融和性から、ガードパイプはダークブラウン(こげ茶色)を、ガードレールはグレーベージュ(薄灰茶色)とダークブラウン(こげ茶色)を基本とする色として提示しています。加えて、歴史的街並みにおいてはダークグレー(濃灰色)、また比較的明るい色彩を基調とする地域の景観と調和しやすいとしてオフグレー(自然な灰色)を候補色として提示しています。
■鋼製防護柵の基本とする色とその標準マンセル値

基本とする色の名称 標準マンセル値 ※ 具体的な色(参考)
ダークブラウン〔こげ茶〕 10YR 2.0/1.0 程度
グレーベージュ〔薄灰茶色〕 10YR 6.0/1.0 程度
ダークグレー 〔濃灰色〕 10YR 3.0/0.2 程度
オフグレー(自然な灰色) 5Y7.0/0.5 程度

※マンセル値
マンセル値は、色を「色相 明度/彩度」で表記したもので、色を表現する値として一般に使われます。
(例えば、マンセル値10YR8.5/0.5とは、色相が10YR、明度が8.5、彩度が0.5であることを示しています。)

4.防護柵の統一と他施設との調和

防護柵自体が周辺景観に融和し、風景の一部として違和感なく存在し得るような形状・色彩の工夫を行ない、景観的基調が同一の場合には、同一種類(形状、色)の防護柵を設置します。また、近接して設置される他の道路付属物等との調和を図ります。
したがって景観配慮に関するマスタープランを作成するなど、一貫した考え方に基づく整備となるようにすることが基本です。

5.視線誘導への配慮

防護柵については、地域特性に応じた景観への配慮を行い適切な色彩、形状を採用し、視線誘導が必要な場合には視線誘導標など他の手段により確保します。

6.コストと維持管理

防護柵は設置に係るコスト(イニシャルコスト)のみならず、維持管理、修繕に関わるコスト(ランニングコスト)をも十分に考慮します。